大西麻貴+百田有希/o+h展「生きた全体-A Living Whole」TOTOギャラリー・間

大西麻貴+百田有希/o+h展「生きた全体-A Living Whole」へ行ってきました。

o+hは公共建築から福祉施設まで幅広く手がけ
日本建築学会賞やヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館キュレーションの受賞歴がある注目の若手建築家ユニットです。

会場はひとつの旅路となるような展示構成です。
GALLERY1(3F)コンセプトの庭 → 中庭(屋外) 木漏れ日の小屋 → GALLERY2(4F)o+hの頭の中へ の順に
旅をするよう作品鑑賞をしていきます。

まずはGALLERY1 「コンセプトの庭」から。

壁面には数々のプロジェクトのシーンが物語のごとく描かれています。

(シェルターインクルーシブプレイス コパル)

「シェルターインクルーシブプレイス コパル」は山形市の子育て環境整備の一環として計画された
性別や年齢、人種・国籍の違い、異なる背景や特性を持つ子ども達が共に遊べる児童遊戯施設です。

建物に正面性はなく体育館、遊具施設、文化施設、カフェ等の空間が
スロープのひとつながりで回遊できようになっています。
中では子ども、大人までも走り回っているそうです。。。


とんがり屋根の「千ヶ滝の別荘」は
SDレビュー2007鹿島賞を受賞されたデビュー作となります。

(千ヶ滝の別荘)

今のところアンビルドのようですが、1階は地形に沿ってゆるやかなスロープで森と一体化し
まさにo+hの世界観がシンプルに表現された作品です。
コンセプトはズドーンと力強いのに、物体化されると何とも柔らかくふわふわとした印象。
この作品に感銘を受けたクライアントが、二重螺旋の家の設計依頼をされたそうです。

(二重螺旋の家)

「二重螺旋の家」はブルーストの「失われた時を求めて」の中で
主人公が菩提樹のお茶にマドレーヌを浸して食べた瞬間、幼い頃の家の記憶がよみがえる
という一節から着想を得ています。

「路地から出発し、廊下、ダイニング、階段、寝室、、、と続いていく空間配列。
まるで紅茶から引き出された空間のように、私たちの記憶のなかにある空間を
そのまま立ち上げたものと言えるのではないだろうか。」(展示より引用)

(二重螺旋の家の展開)

片流れ屋根の連続性がリズミカルで美しい
滋賀県の多賀町中央公民館「阿賀結いの森」です。

(多賀町中央公民館)

多賀町産の杉材を使用しているのですが
設計がまとまった段階で山から切り出しを開始し、杉材を乾燥させるのに2年半、、、
着工待ちだったそうです。
模型の下に敷き詰められたタイルは、中庭へとつながっていきます。

熊本地震震災ミュージアム きおく(KIOKU)

2016年の熊本地震を伝える「熊本地震震災ミュージアム きおく(KIOKU)」。
大屋根には、阿蘇黄土を釉薬にしたタイル6万枚を使用しており
そのタイルが模型の下に敷き詰められているそうです。

中庭「木漏れ日の小屋」

中庭の展示

小屋の下に入ると、ベンチがあり木の葉のいい香りがします。。。
屋根を構成する桁がきちんとカーブ状に加工されていて驚きました。

続いてGALLERY2「o+hの頭の中」へ。

オレンジのような赤色の布で構成された薄暗い空間です。
渦巻の入口のようなところから内部へぐるりと入っていきます。

布のあちこちには窓(切込み)があり、囲われた内部をのぞき込みます。
まるで脳の中、空想の世界を見ているような感覚になります。

「生きた全体」とはどんな意味を持つのか

今展示会のコンセプト「生きた全体(A Living Whole)」は、お二人が影響を受けた、詩人T.Sエリオットの言葉です。
展示を読み進めると、建築物を取り巻く「全体」についての考察が言葉によって成り立ち
その言葉の意味に、何かとてつもなく大きな包容性の広がりを感じました。

o+hの世界観。
建築を知らない方も、本好きな方なら絶対に楽しめます。
ぜひ足を運んでみてください。