この記事では住宅を計画する上で、基本的な設計手法を簡単にご紹介します。
理想のプランが叶えられる可能性が高いと考えられる土地は、この手法によって問題が解決できそうな土地です。
ぜひ土地を探されている方は参考にしてみてください。
建物を設計する上で「敷地を読む」という行為をしますが
どんな敷地も唯一無二の特性を持っており(人間と同じですね、、、)その特性を把握しないで建物の計画するのは不可能です。
住む環境の大切な基本要素は「通風」と「採光」です。
これらの要素を自然環境から上手く取り入れ計画をすることが重要です。
あまりにも自然に逆らうような計画をすれば、居心地が悪く光熱費の嵩む家になりかねません。
土地についてよくご質問を頂くのは
Q:南側道路、北側道路、、、東側、西側、、、どっちに道路があるのが正解なんですか?
A:正解はありません!
本当に色々なケースがあって一概に、南側道路が良いです!と言えないのが正直なところです。
南東角地のきれいな整形地で、価格もそこそこの一見良さそうな土地。
ところが実際に調べてみると、使える面積は10坪切るほどになってしまう、、、
法規制が厳しく、必要とする高さが確保できない、、、
現地に行ってみたら、地域のゴミ置き場の場所が気になる、、、等々。
土地によって本当に様々な状況があり、道路位置の問題ではないことがわかります。
「建物配置」
敷地に対して建物を北側に寄せ、南側を空けることで採光を確保します。
太陽の動きに基づき日当りを確保する為の建物配置のセオリーになります。
下記は南側建物の影の影響を略図化したものです。
隣地が2階建て住宅のであることを想定し
「夏至」「春分・秋分」「冬至」における太陽南中高度時の日差しの入り方を示しています。
夏の日差しは高度が高く、冬の日差しは高度が低く建物の奥まで入り込みます。
夏は日差しを遮り、冬は日差しが入るよう計画をしますが
今回は、住宅密集地での採光を確保する設計手法になりますので日差しの確保が一番厳しい
「冬至」に焦点を当て図解していきます。
南側建物の軒先から約6~8m離れている場合、1階のリビングに何も問題なく採光を確保できます。
こういった配置が可能な土地は、ご希望のプランが叶う土地だと考えられます。
ただし都心部の奥行のあまり無い土地では、セオリー通りの建物配置ができないことの方が多く少し工夫が必要になってきます。
隣地との離れが4m程度となった場合、隣地建物の影になる部分が多くなるので1階リビングに日差しを取り入れるのが難しくなります。
その場合は上部を吹抜けにし、上部からの柔らかい日差しが入ってくるよう計画をしたりします。
隣地との境界がさらに狭くなる場合、1階にほとんど日差しが入ってこないので
この場合は2階リビングとして計画します。
「敷地の中の一等地」
一等地と聞くと○○エリア!?というイメージがありますが
マンションで言うと最上階の南東角部屋で「日当たりのいい場所」になります。
東から南にかけての太陽光、特に朝と日中に差し込む光は清々しく心地の良い日差しです。
敷地の中の一等地に十分な日当りがあれば良い土地と言えますが
周辺建物の影になり一等地ではなくなる場合もありますので、周辺をよく観察することが必要です。
南西エリアは良くないの?と言うとそうではありません。
前述のセオリー通りの「建物配置」が可能な広大な敷地であれば、何の心配も要りません。
住宅密集地で南西からの採光しか確保できない環境で、どうしても南西向きのプランになる場合
少し注意が必要になってきます。
それは「西日」の取扱いについてです。
海辺で見られるサンセットは美しく神々しい!のですが、、、
南西側にリビング、吹抜けがあり上部に大きな窓があったりすると
夏場はもの凄い勢いで室内温度を上昇させます。どんなに良いエアコンを設置しても、焼け石に水。
この場合、西側に設ける窓については
日当たりの為の大きな窓を設けるのではなく、通風の為の「小窓」を設けるというのが得策です。
「抜け感」
数値で表される広さではなく、視線の抜けること等によって広さを感じる感覚のことです。
平面的には敷地の中に「余白」をつくったり、立体的には吹抜けをつくったり、、、段差をつくったり、、
そういった仕掛けをして「抜け」をつくり出します。
狭い敷地いっぱいに、ギュっと詰め込んでしまうと圧迫感のある空間となり
躍動感がない故にのっぺりした空間になりがちです。
生活できない訳ではありませんが、心地よく過ごすということを前提にした場合
「抜け」が全くないと面積の割に狭く感じたり、居心地の良くない空間になりかねません。
住宅の設計をする上では、こういった基本概念を基に計画をしていきます。
次回の記事では、敷地の条件によって考えられる具体的プランの参考事例をご紹介していきますので
ぜひ土地選びの参考にしてみてください。