TOTOギャラリー・間の魚谷繁礼展「都市を編む」へ行ってきました。
歴史的都市「京都」という極めて特殊な地域を拠点にご活躍されている建築家、魚谷繁礼氏の展示会です。
京都はウナギの寝床と表現される「町家」が数多く残っており、それは京都の魅力の一つにもなっています。
しかし接道要件を満たしていない敷地が多く新築や増築が出来ない為、近年は取り壊されマンション開発が進んでいます。
一度更地にしまえば二度と建てられなくなる。。再建築不可の敷地が数多く存在しています。
そんな中、今回の展示では単に取り壊すのではなく
生きた都市遺構としていかに後世へと継承できるのかという取り組みを伝える貴重な内容でした。
(※接道要件:建物の敷地は道路に2m以上接していなければならない)
まずは京都の広域市街図の展示です。
四角い枠のグレーラインはかつての平安京です。
応仁の乱以降の市街地のライン、秀吉が築いた御土居のラインも描かれています。
京都の街が形成された歴史がわかると同時に魚谷氏が、敷地だけではなく都市全体を考察していることがうかがえます。
↓綿密なリサーチの展示。
敷地だけではなく、敷地と連続する路地も重要な要素になるため
街区全体の模型を製作し検討しています。
↓隣家の隙間(路地)を通って道路へ出るといった敷地の町家改修です。
現行の建築基準法に則らない既存不適格のままとする設計手法で改修をしていますが
いとはいえ、耐震と防火規定については基準法以上の水準とすることで解決しています。
↓京都型住宅モデルの構造モデル (モックアップ)
壁に梁を架け、梁に床を張り、建具によって柔らかく仕切られる仕組み。
壁は構造・断熱・調湿・準耐火(燃え代設計)の役割を担っています。
↓こちらのお宅のアプローチ方法は、周辺隣家の軒下の細い路地を通り玄関にたどり着くようになっています。
所有権云々関係なく壁や屋根など色々なものが路地に出てきている、このような現象は京都あるあるのようです。
東京ではまずありえないことですね、、、歴史ある町に住む、、、
このような路地文化は京都の方々の共有意識によって成り立っているのではないでしょうか。
↓3階ギャラリーの屋外には、取り壊されることになった五條のお茶屋建築の軸組が移築されていました。
壁や床が無くなってしまっても軸組は最後の砦のように残っています。
移築の際に無事をお祈りしたそうです。
京都から来た雅なものが、東京の無骨な階段やブリッジと一体化している。
不思議な感覚があり同時に圧倒されました。
この屋外階段を上がって4階の展示室に移動します。
4階の展示室は薄暗い空間に作品が並んでおり、京都の路地を思わせるかのような展示空間となっていました。
↓軸組を守るようにして鉄骨やコンクリートを組み込んだ改修方法。
京都での町家改修を通して都市の在り方を、時間軸を持って考えさせられる展示会でした。
歴史好きな方も楽しめます。
ギャラリーの下階には建築関係のBookshopがあり、静かな空間でじっくり吟味することできます。
日本を代表する歴史的都市、京都町屋改修の展示会。
ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
開催期間 2024.05.23-08.04